Kissしちゃう?
 僕も早紀も今のままで十分幸せだった。


 決して失いたくはない――、互いにそう思いながらだ。


 秋色の空の下で、僕たちはゆっくりしながら、時間が過ぎるのを待つ。


 若いときは有り余るほど時間がある。


 社会人とはまるで違うのだから……。


 そして早紀が立ち上がった。


「今日の四限目は体育の授業ね」


「ああ。温水プールで水泳だろ?」


「うん。真二も風邪引かないようにね」


「分かってるよ」


 僕たちはすでに授業の際、着用する水着を持ってきていたので、四限が始まるまで、キャンパス内でゆっくりするつもりでいた。


 辺りにはやたらと学生カップルが多い。

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