Kissしちゃう?
第六章
     6
「秋晴れが綺麗ね」


「ああ。こういうのを夕焼けって言うんだよな?」


「ええ。とっても綺麗」


 早紀がミルクティーを一口啜り、ゆっくりと息をつく。


 僕は缶コーヒーの熱で両手を温めながら、時折凍えるように冷たい北風に曝された。


 体育の授業は始まる前に必ず出欠を取るし、この科目は学部学科問わず、二年生全員が必修だ。


 絶対落とせないので、自ずと気合が入る。


 僕と早紀は学内のベンチに座って、ゆっくりとしていた。


 夏場だったらプールが気持ちいいのだが、夏も終わってすっかり秋である。


 いくら温水プールでも体が冷えてしまい、寒い。


 「……」


 僕たちは辺りを覆う寒気を感じ取りながら、しばらく無言でいた。
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