Kissしちゃう?
第八章
     8
 早紀の部屋を出て、一度自分の部屋へ戻った僕は、すっかり寝乱れていた、幾分癖のある髪の毛をスタイリングムースで綺麗に整えて、髭もちゃんと剃り、大学に行くため教科書類や筆記用具を入れたカバンを持った。


 キッチンで軽く一杯コーヒーを淹れて、飲む。


 朝の時間はこれが一番なのだ。


 僕はカフェインを体内に入れて、ゆっくりと学校に行く準備を整えた。


 ほんの数分間だけ寛いだ後、立ち上がった僕は、眩暈(めまい)や立ちくらみがするのを覚えながら、流しにマグカップを置いて部屋を出る。


 ちゃんと施錠して、ドアがロックされたのを確認した後、僕は大学の方向へ歩き出した。


 途中で数人の皆慶大生とすれ違ったが、別に気に留めることもなく、僕は歩き続ける。


 マンモス大学は人間が多いので、キャンパスまで通っていると、得てしてそうなってしまうのだ。


 僕はその日、考えていた。


“早紀、二度寝してないかな……?”

< 59 / 111 >

この作品をシェア

pagetop