Kissしちゃう?
 ふっと早紀が、


「キスでもする?」


 と誘ってきた。


 僕が黙ったまま頷くと、彼女がルージュを塗った柔らかい唇を僕のそれにそっと重ね合わせてきた。


 公園で堂々とキスしても、誰も見ていない。


「……」


 僕たちは互いに無言のまま、しばらく無我夢中で口付け合い、お互いの口の中にある熱を移し、愛おしい感触を確かめ合った。


 そしてキスし終わると、早紀が呟くようにして言った。


「……あたし、真二のことが好き」

 
 僕たちの恋はまるで秋空のように照り映(は)え、輝いていた。
 
 
 しばらくの間、抱き合いながら、二人して池の流れを相変わらず見つめている。

< 6 / 111 >

この作品をシェア

pagetop