Kissしちゃう?
 そう思い、ポケットからケータイを取り出して、もう一度彼女の番号に掛けてみる。


 すると電話向こうから、


「はーい」
 

 という、いかにも眠そうな声が聞こえてきた。


 ――君さ、授業遅刻しちゃうよ。


「今日何かあったっけ?」


 ――東洋思想史の授業が一限目にあるだろ?田中先生の。


「ああ。あの爺さん先生だったら出席取らないから出ないわ」


 早紀はフゥーと息をつき、僕に、


「真二」


 と言った。


「五限目の英語の授業は必修だし、ちゃんと出るから、田中のつまんない授業なんかサボって、今からあたしの部屋に来ない?」

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