Kissしちゃう?
 ――……。


「何で黙ってんのよ?あんなつまんない授業、出るだけ時間の無駄だから」


 一瞬考え込んだ僕が、やがて、


 ――うん、分かった。じゃあ今からまた君の部屋に来るよ。目は覚めてるんだね?


 と訊いた。


「ええ。真二もたまにはサボることを覚えた方がいいわ」


 ――そうだね。要領よくね。


 僕が頷くと、早紀が電話越しにフフフと笑った。


 ――今から来るから、待ってて。


 僕がそう言って通話遮断ボタンを押し、電話を切った。


 フリップを閉じて、ジーンズのポケットに押し込み、バッグから入れていた教科書類を抜き取って、中に汲んでいた水道水のペットボトルが入っているのを確認し、部屋の出入り口まで行く。


 玄関先で靴を履き、ゆっくりと歩き出した。
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