Kissしちゃう?
 祈るような気持ちで僕は目の前にいる裸の早紀に奉仕する。


 ゆっくりと時間が流れていく。


 秋の日はあっという間に落ち、僕はその日の夕方、早紀と一緒に必修科目である英語の授業に出席した後、彼女と正門前で別れ、その足でバイト先の焼肉店に行った。


 立ち仕事が夕方の六時から午前零時前まで、ほぼ六時間続く。


 だが、僕はすっかり慣れていた。
 

 返って、大学に講義を聞きにいく合間の絶好の気分転換になっている。


 ちなみに僕のバイト代はほとんど全てが生活費に回っていた。


 さすがにいい年をした青年が生活費全額を実家の親に金を出してもらうことには抵抗があるのだ。


 それに自分で稼いだ金となると、金額の多寡(たか)は別にして、お金をもらうことの大切さとありがたみが痛いほど分かる。


 とても貴重な体験だった。


 僕は厨房で黙々と皿洗いをしながら、ぶっ続けで六時間立ち、足が棒のようになる感覚を覚えた。
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