Kissしちゃう?
 まあ、このスタイルでしばらくはいいかなと安易に考えていた。


 大学の授業など、所詮は専門の知識を詰め込むだけで、社会に出れば関係ない。


 それに卒業後、研究者でもなんでもなく、普通に物書きになりたいと願っている僕にとって、文学に関する薀蓄(うんちく)などほとんど必要ないのだった。


 学校とバイト、それに早紀とのデートの合間に、僕は時間を惜しみながら、公募の原稿を書き続けていた。


 来年二〇〇九年の一月末に締め切りの新人賞に応募するつもりで、僕は暇があればパソコンに向かっていた。


 早紀とのデートの時間はデートで楽しみ、一人になれば創作にどっぷりと浸(ひた)る。


 それでも僕と早紀は忙しい時間をやりくりしながら、上手いこと交際し続けていた。


 互いにまだまだ若いので、毎日毎日が全力投球なのだ。


 僕はその日、コーヒーをもう一杯淹れて、パソコンに向かい原稿を書き足した。


 午前九時過ぎになり、僕はマシーンをシャットダウンして、教科書類が入ったリュックを背負い、時間に余裕を持ちながら部屋を出る。


 そのまま大学の正門へと向かった。
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