Kissしちゃう?
 町が冬枯れ始めている。


 僕は自分の同級生たちが早くも就職活動を始めているのを感じながらも、自分には一切関係ないと思っていた。


 就活自体に馬鹿馬鹿しさを覚えていたし、仮に文芸賞でデビューできなくても、二、三年ぐらいはバイトで食い繋ぎながら浪人して、目標である職業作家を目指そうと思っていた。


 決意が固いのだ。


 一方の早紀も図書館司書の免許を無事取って、就職先がなくても、普通にアルバイトをしながら食べていくつもりのようで、実家に帰るということはまず考えていないようだった。
 

 僕も早紀も半ば背水の陣で臨むつもりでいる。


 そう、夢を追い続けるのはとても大変なのだが、まだ若い分それも楽しいのだ。


 そして今日も僕は授業とバイトの合間に早紀と付き合い、夜はバイト先の焼肉店に行って、フルに仕事してから、明け方ぐらいまで原稿を書くつもりでいた。


 僕は自分で言うのもなんだが、パワフルでエネルギッシュなのである。
 

 たとえ文学部という、文学や芸術に長(た)けた色の白いひ弱な人間が集まる場所の中でも、
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