Kissしちゃう?
「じゃあ一缶もらうよ」


「分かった」


 早紀が頷き、冷蔵庫を覗き込んで、キンキンに冷えていたビールを一つ、僕に手渡す。


 彼女が買うのはいつも糖質オフのビールばかりだった。


 最初、僕は思っていた。


 早紀は健康維持のために、あえてビールでもカロリーの少ない、やや違和感のあるものを飲みたがっていると。


 そして実際その通りだった。


 彼女は確かに太っていないし、実のところ、健康には相当注意を払っているのだ。


 そう、年齢不相応なまでに。


 早紀が理想的な体型を維持し、尚且つ同級生から、それを羨まれるのにはそういった裏事情があった。


 彼女は飲み会やコンパなどを極端に嫌い、僕と一緒に軽く一杯上品に軽く飲むのを何よりも楽しみにしているようだ。

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