Kissしちゃう?
 僕たちはあることがきっかけで永遠を誓い合えなくなる。


 それはまるで映画か小説のような類の出来事だった。


 運命の歯車はいったん狂い出すと、止(と)め処(ど)なく狂ってしまう。


 天空の彼方にいる神様が僕たち二人にあることを仕掛けてきたのだ。


 そう、繰り返し言うが、何でもないことが実は幸せなのだった。


 ガラスなどの壊れ物はいったん床に落としてしまうと、脆(もろ)くも儚(はかな)く壊れてしまう。


 それを想像すると得にも言えず切ない。


 出来事は実にその年のクリスマスイブに起きたのだ。


 聖なる夜が涙の夜へと変わってしまうその感覚を、僕は味わわざるを得なかった。


 最後に口付けを交わしたのは確か十二月二十三日で、そのとき唇表面にあった優しく愛おしい感触を僕は未だに忘れられずに覚えている。


 一際鮮明に、だ。
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