俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
次第に感極まったように声を震わせる彼は、口をぱんっと片手で覆い、さらに続ける。


「そのときから、一生社長にお仕えしようと決心しました。もしもあのお方のご期待に沿えぬならば、私は切腹する所存で……!」

「重いですよ」


専務がすかさず冷静なツッコミを入れ、「武蔵は酔っ払うと武士語になっちゃうの。ウケるでしょ」と言うエイミーと一緒に大笑いした。

こんなに濃いキャラなのに、武蔵さんの存在を抹消していた前会社が信じられないわ。

ひとしきり笑ったあと、少々頬を赤らめるほろ酔い気味のエイミーが、穏やかな表情で言う。


「あたしたち皆、成り上がりみたいなものだし、ボスに感謝してるんだ」


この会社は、ワケアリの過去を持つ仲間が集まって成功した。そう考えると、ブラック企業勤めだった私がここに来たのも必然的のように思える。

隣のテーブルの皆も、いつの間にか私たちの話を聞いていたらしく、それぞれが静かに思いを巡らせているようだった。

そんな彼らに、なんとなく改めてひとこと伝えたくなり、私は姿勢を正す。
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