俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
鳴り続けるそれを再びポケットにしまうと、桐原さんが不思議そうに尋ねる。
「出ないんですか?」
少々決まりが悪くなり、チラリと彼を見上げて苦笑を漏らした。
実は、両親は中学の頃に離婚していて、私は母とふたりで暮らしていた。私は父のこともとても好きだったのに、離婚して以来なかなか会うことは許されず、次第に母に対しての不満が募っていった。
それは消えるどころか色濃くなるばかりで。息苦しい母子ふたりの生活から抜け出したい一心で、東京の大学を選んだのだ。
「……私、親とあまり仲がよくなくて、ここ数年一度も実家に帰ってないんです。たまにこうやって母が連絡をくれるんですけど、今さらどう出たらいいのかわからなくて」
イルミネーションに彩られる都会の街並みを目に映しながら、正直に打ち明けた。
大学の頃から年に一回、義務のように顔を見せるだけだった母のもとには、就職してからは忙しさを理由に一度も帰っていない。
今はもう、母に対しての不満は小さくなっていて、彼女を恨んだりもしていない。しかし、ここまで疎遠になると、気まずさや意地が勝ってどうしても避けてしまう。
「出ないんですか?」
少々決まりが悪くなり、チラリと彼を見上げて苦笑を漏らした。
実は、両親は中学の頃に離婚していて、私は母とふたりで暮らしていた。私は父のこともとても好きだったのに、離婚して以来なかなか会うことは許されず、次第に母に対しての不満が募っていった。
それは消えるどころか色濃くなるばかりで。息苦しい母子ふたりの生活から抜け出したい一心で、東京の大学を選んだのだ。
「……私、親とあまり仲がよくなくて、ここ数年一度も実家に帰ってないんです。たまにこうやって母が連絡をくれるんですけど、今さらどう出たらいいのかわからなくて」
イルミネーションに彩られる都会の街並みを目に映しながら、正直に打ち明けた。
大学の頃から年に一回、義務のように顔を見せるだけだった母のもとには、就職してからは忙しさを理由に一度も帰っていない。
今はもう、母に対しての不満は小さくなっていて、彼女を恨んだりもしていない。しかし、ここまで疎遠になると、気まずさや意地が勝ってどうしても避けてしまう。