俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
母はきっと、ずっと寂しい思いをしているはずなのだから、いい加減に私も大人な対応を取らなければと思うのだけれど……。
物思いにふけってしまい、いつの間にか歩くペースが落ちている。そんな私に歩幅を合わせ、話を聞いてくれていた桐原さんが、ふいに口を開く。
「有咲さんと社長は、お互いの心に寄り添い合うことができるかもしれませんね」
「え?」
急に飛び出した名前に驚き、私はぽかんとして桐原さんを見上げた。彼は表情を変えずに、抑揚のない声で語る。
「社長も、長年ご両親と仲違いしていたようなので。本人はそのことを後悔していると思います。もうふたりとも会うことはできないので、なおさら」
「それって……」
「クリスマスの翌日は、ご両親の命日だそうです」
わずかに下がったトーンで告げられた事実に、私の心臓がドクン、と重い音をたてた。
不破さんは、ご両親を亡くしていたなんて……。もし私と同じように、心の奥底では仲直りをしなければと思っていたとしたら、悔やんでも悔やみきれないだろう。
自分に置き換えて、胸の苦しさをひしひしと感じていると、桐原さんは心配と呆れが混ざった声で言う。
物思いにふけってしまい、いつの間にか歩くペースが落ちている。そんな私に歩幅を合わせ、話を聞いてくれていた桐原さんが、ふいに口を開く。
「有咲さんと社長は、お互いの心に寄り添い合うことができるかもしれませんね」
「え?」
急に飛び出した名前に驚き、私はぽかんとして桐原さんを見上げた。彼は表情を変えずに、抑揚のない声で語る。
「社長も、長年ご両親と仲違いしていたようなので。本人はそのことを後悔していると思います。もうふたりとも会うことはできないので、なおさら」
「それって……」
「クリスマスの翌日は、ご両親の命日だそうです」
わずかに下がったトーンで告げられた事実に、私の心臓がドクン、と重い音をたてた。
不破さんは、ご両親を亡くしていたなんて……。もし私と同じように、心の奥底では仲直りをしなければと思っていたとしたら、悔やんでも悔やみきれないだろう。
自分に置き換えて、胸の苦しさをひしひしと感じていると、桐原さんは心配と呆れが混ざった声で言う。