俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
デスクの後ろ側にふたりしてしゃがんで書類を集め始めると、目の前にいる彼が私の顔のそばになにかを近づけてきた。

それに気づいて動きを止め、彼の指が摘む“なにか”に焦点を当てた私は、驚きで目を見開く。


「えっ、これ……!」

「合鍵」


鈍く光る銀色のそれの正体を口にされ、ドキンと心臓が跳ねる。

それと同時にピンときた。ガラス張りのここでは皆に見られてしまうから、こうやってデスクに隠れて合鍵を渡すために、書類を落としたのではないかと。


「まさか、これを渡すためにわざと?」

「察しがいいね」


目を細めて確認する私に、彼はいたずらっぽく口角を上げてみせた。

あなた、秘密のオフィスラブごっこでもしているつもりですか。ちょっとキュンとしちゃったでしょうよ。

胸がときめくのを感じるも、大事な合鍵を受け取っていいものかとためらう。私は彼女ではなく、ただの秘書なのだから。


「こんな大切なもの……私が預かってしまっていいんでしょうか」

「アリサ以外に渡す女なんかいないよ」


ふ、と軽く微笑んで即答され、胸に矢が刺さったかのような感覚を覚えた。
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