俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
二日後、不破さんがどこかへ出ていくのを見届け、定時まで会社で仕事をしてから彼のマンションへ向かった。
ここに来るのは慣れていても、合鍵を使って勝手に入るとなるとやはり緊張する。遠慮がちに鍵を開け、一応「お邪魔します……」と声をかけながら部屋に上がった。
たいして散らかっていないが、ソファの背に部屋着がかけられたままになっていたりする。いつも彼からほんのり漂う香りもこの中には充満しているし、本人はいないのにすごく気配を感じる。
ドキドキしつつ足を進め、真っ先に向かうのはピーターがいるケージだ。
「ピーター、元気にしてた?」
鼻をひくひくさせてこちらに近づいてくる。ふわふわの身体を思う存分撫でてから、ケージの中やトイレを綺麗にしてあげた。
その掃除グッズの中に、初めて見る人参の形をしたおもちゃが紛れている。不破さんがピーターのご機嫌を取るために買ったのだろうか。
ちょっと拝借してピーターのそばに置き、しばらく様子を見てみる。
……が、まったく興味を示さない。まだ懐かれていないのかもしれないと思うと、気の毒だけれど面白くもあって、ひとり失笑した。