俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
そのあとは頼まれていた洗濯をして、溜まっていたワイシャツにアイロンがけをしておく。こんなことをやるのは、どう考えても彼女か奥さんでしょ……。

自分の立場がよくわからなくなりつつも、彼のために尽くそうと動く精神はもはや身についている。

他になにかしてあげられることはないかと思案すると、夕飯を作っておくという考えが思い浮かんだ。

でも、遅くなるらしいし、夕飯はどこかで済ませてくるかもしれない。第一、料理はお手の物の彼に素人の私が作ったものを食べてもらうというのは、かなりハードルが高い。

どうしようと悩んだ末、ひとまずメッセージを送ってみることにした。


【お疲れ様です。夕飯はどうされますか? 簡単なものしか作れませんが、よろしければ用意しておきますよ】


そう送ったはいいものの、返事が来るまでそわそわしてしまう。

ピーターをかまいながら待つこと約十分、メッセージが届いた音がして、ドキッとすると同時にすぐさまスマホを手に取った。


【アリサの手料理、食いたい】


そのたったひとことに、胸がキュンと鳴る。

あぁ、これだけでこんなに嬉しくなるなんて。肝心なのは料理を食べてもらったあとのリアクションなのに。
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