俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
彼のメッセージを眺めていると、次いで【キッチンにある食材、なんでも使っていいよ。九時頃には帰る】と送られてきた。六時半の今からなら、十分時間がある。


「……よし。せめて食べてもらえるモノを作らないと」


あまり自信はないものの気合を入れた私は、さっそくキッチンにお邪魔して、冷蔵庫の中を拝見させてもらう。そして、「おぉ」と声を漏らした。

さすがは不破さんだ。いろいろな食材が綺麗にしまってあり、野菜も肉も充実している。なにに使うのかよくわからないものもあるし、見たことのない調味料もそろっている。

興味深く観察しつつメニューを考え、髪をひとつに括ると調理を開始した。


調理器具を探したり、使い勝手が慣れていなくて時間がかかったが、八時前にはひと通り作り終わった。

メインの鶏の照り焼きと、煮物や和え物をテーブルに並べてみると、まるでおばあちゃんの家の食卓みたいだ。木彫りの熊を置きたくなるわ。

私の場合、和食が一番作りやすくて失敗が少ないからこうしたのだけど……普通すぎたかも。

誰に対しても容赦のない不破さんのリアクションを想像すると、正直不安しかない。まぁ、今さらどうしようもないか。
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