俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
 * * *


落胆しながら、すぐにでも親友に話を聞いてもらおうと思って帰途についた。

調布市の仙川にあるマンションでは、大学を卒業してから親友とルームシェアしているのだ。

しかし残念なことに、介護福祉士として働く彼女はちょうど夕方から夜勤だった。私とほぼ入れ違いになってしまい、結局まだ話せていない。

それもあってか、不破さんにすべて吐き出した今、予想以上にスッキリしている。これでさらに午後の業務で忙殺されれば、だいぶ気持ちが切り替えられるかもしれない。


「今だけは、ここがブラックで感謝してます。不満ばっかりのくせに、都合いいですけど」

「普段いいように使われてる会社なんだから、こんなときくらい利用してやれよ」


確かに不破さんの言う通りだと思い、私は笑いをこぼして「そうですね」と同意した。

どうやら、レストランに派遣されている立場の彼も、プロバイドフーズがブラックだという認識があるらしい。

それも当然か、平社員なら受ける扱いは皆似たようなものだろうから。


「でもここの待遇じゃ、新しい恋どころか自分がやりたいこともできないだろ。辞めたいって思わないの?」

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