俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい

孤独を満たすハニー・キス


師走の日々はあっという間に過ぎていき、今日は十二月二十二日。

クリスマスを目前に浮足立っているような街中を、不破さんとふたりで車を走らせて向かうのは、レストランウェディングも行うフレンチの店だ。もちろんデートなんかではなく、毎日の抜き打ちチェックで。

駐車場に着くと、白を基調とした洋館のようなレストランには、親密そうな男女が出入りしている様子が見える。これじゃ私たちも……。


「まるで恋人同士、だな」


心を読まれたかのような声が聞こえて隣を向けば、彼は少々いたずらっぽく口角を上げている。この間、社長室で私が口にしたのと同じことをわざと言っているに違いない。

からかっているのは明らかで、私は口の端を引きつらせて「……そうですね」と答えた。

でも、ロマンチックな雰囲気が漂うレストランに好きな人とふたりで来たら、嫌でも意識してしまう。先日、家まで送ってもらった夜だって、私はドキドキしていたのだ。

不破さんは仕事中にどこかへ移動するとき、自分で社用車を運転して向かうことが多い。

秘書になってからの一ヶ月で何度も助手席に乗せてもらっているため、スマートに運転する姿のカッコよさにときめくのにはだいぶ慣れた。
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