俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「はじめまして。不破と申します」
名刺を受け取った桃花は、はっとした様子で彼を見上げた。この人こそ、噂の成り上がり社長だと気づいたのだろう。
不破さんは私たちの不穏な空気をものともせず、今の会話とはまったく関係のないことを言う。
「このレストランにはわが社の人材を派遣しているんですよ。ぜひ料理の評価をしていただいて、率直な感想を有咲にお伝えください」
完全にビジネストークをしたかと思うと、彼は踵を返し、突然私の肩を抱いて身体の向きを変えさせる。
「場所変えよう。フレンチって気分じゃなくなった」
「え、あっ」
歩き出す彼に引きずられるようにして、駐車場へと引き返していく。
もしかして不破さん、私たちのことを考えて場所を変えようと? 確かに、このまま同じレストランにいるのはお互いに気まずいし、機転を利かせてくれてありがたい。
肩を抱かれてよろけながら、桃花たちを振り返って「じゃあね!」と叫ぶ。
桃花がなにかを言いたそうにしているのが見えたけれど、少々強引な不破さんにさっさと連れて行かれてしまい、聞くことはできなかった。
名刺を受け取った桃花は、はっとした様子で彼を見上げた。この人こそ、噂の成り上がり社長だと気づいたのだろう。
不破さんは私たちの不穏な空気をものともせず、今の会話とはまったく関係のないことを言う。
「このレストランにはわが社の人材を派遣しているんですよ。ぜひ料理の評価をしていただいて、率直な感想を有咲にお伝えください」
完全にビジネストークをしたかと思うと、彼は踵を返し、突然私の肩を抱いて身体の向きを変えさせる。
「場所変えよう。フレンチって気分じゃなくなった」
「え、あっ」
歩き出す彼に引きずられるようにして、駐車場へと引き返していく。
もしかして不破さん、私たちのことを考えて場所を変えようと? 確かに、このまま同じレストランにいるのはお互いに気まずいし、機転を利かせてくれてありがたい。
肩を抱かれてよろけながら、桃花たちを振り返って「じゃあね!」と叫ぶ。
桃花がなにかを言いたそうにしているのが見えたけれど、少々強引な不破さんにさっさと連れて行かれてしまい、聞くことはできなかった。