俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
改めて自分が孤独だと実感すると、無性に虚しさと悲しみに襲われ、じわりと涙が込み上げる。遠くのほうからする、エイミーの「やっと終わったー」という明るい声を耳に入れつつ、デスクに肘をついてうなだれた。

そのとき、スマホが軽やかな音をたてる。きっと、桃花からの返信だろう。

重い身体を動かしてスマホを確認した私は、予想とは違っていた名前を見て首を傾げた。


「不破さん?」


意外な人物からのメッセージは、【今どこにいる?】という端的なもの。突然居場所を聞いてくるなんて、どうしたんだろうか。


「“まだ会社ですが、なにかご用ですか?”っと……。……え、早っ」


送信してスマホを置いた数秒後、再び音が鳴ったので目を丸くした。彼の返信を見て、若干脱力する。

【終わったら家に来てくれ】

なんだ、また時間外労働ですか……。明日から連休だし、颯爽と帰っていったところからしてなにか用事があるのだろうから、今日は呼び出されることはないと思っていたのに。

まぁ、ここ以外にいる場所もないし、ありがたいか。好きな人と過ごせると思えば、むしろ幸せかも。

断る理由はなく、時間を確認して【七時頃には着くと思います】と送信した。


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