俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
好きだった人の顔を実際に見て、声を聞いて、彼の視界に自分が入っていることを肌で感じたら、想いが募るのは自然なことだ。恋愛感情を押し殺した相手なら、尚のことだろう。


「そこで連絡先を交換して、しばらくはメールでやり取りをしてたの。そうしてるうちにだんだん物足りなくなってきて、お互いに会いたいって思うようになった。でも、このことを麗が知ったらどう思うだろうって考えると、どうしても言えなくて……」


桃花の表情は苦しげなものに変わり、言葉を詰まらせる。その心情もわかるから、私は真摯に相づちを打って耳を傾ける。


「内緒で一回会ったら、罪悪感でいっぱいになった。でも、颯ちゃんと仲を深められたことが嬉しかったのも事実で。それで今日、告白、されて……」

「えっ、まだ付き合ってなかったの!?」


頷いて聞いていた私は、正直な気持ちを吐露する彼女に再び茶々を入れてしまった。桃花は目をしばたたかせて答える。


「うん。だって、今日会ったのが二回目だし」

「ピュアだなぁ……」


思いのほか初々しくて、なんだか肩の力が抜ける。これまで何度も会っていて、とっくに付き合っているものだとばかり思っていたから。
< 157 / 261 >

この作品をシェア

pagetop