俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい

翌日、午後二時に恵比寿駅に集合した。改札を出たところで不破さんが待っていてくれて、ご無沙汰だったこの待ち合わせのシチュエーションにすらドキドキしてしまった。

思えば、不破さんの私服姿を見たのは四年ぶり。昔も今も洗練されたセンスのよさは相変わらずで、チェスターコートに黒のスキニーを合わせた今日のスタイルも文句のつけどころがない。

私はいつもより少し女子力高めのニットワンピを着て、ストレートロングの髪の毛も緩く巻いてみた。思いっきりデート仕様だけれど、意識してもらいたいがための苦肉の策だからと開き直っている。

まずは映画館へ向かい、人気漫画の実写化が気になると意気投合し、迷わずそれを見ることに決まった。

映画が始まるまで、このキャラにあの俳優はハマるのかとか、展開は変わってくるのかとか、あーだこーだと言い合って。

館内が暗くなると、ちょっとしたことを話すにも顔を近づけて囁いたり、同じシーンで笑って目を見合わせたり。

そういえば映画デートってこんな感じだったな、と終始胸をときめかせ、映画の展開よりも隣の彼のほうが気になってしまった。
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