俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
そのあとは、落ち着いた高級感漂うレストランでめちゃくちゃ美味しいステーキをごちそうしてもらった。

ミディアムレアのお肉で、ナイフを入れればスッと切れるくらい柔らかく、頬張った瞬間に肉汁が溢れる。瞬時に幸福感で満たされたけれど、それは高級な牛肉を食べたからというだけではない。

不破さんと、普通の恋人さながらにデートしていることが夢みたいで、想像以上に楽しいから。

彼は、私とこんなふうにしていてどう思っているのだろう。たまたまなんの予定もない休日だったから、今日会ってくれたのはただの暇潰しなのだろうか。

たわいない話はいくらでもできるのに、肝心なことを聞く勇気が出ない。

キスをした仲なのに……いや、キスをしたからこそ、余計複雑に考えてしまっているのだ。


意気地なしの自分に辟易したまま、クリスマスが終わりに近づいていく。帰る前に、せっかくなので恵比寿の街を彩るイルミネーションを見ていくことになった。

無数のシャンパンゴールドの光に包まれる幻想的な広場を歩き、大きなクリスマスツリーを目指す。

当然ながら周りはカップルばかりで、彼と曖昧な関係でしかない自分がいたたまれなくなる。最初は彼の隣を歩くだけで幸せだったのに、今はそれだけでは物足りないと思うなんて。
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