俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
軽く笑って返した私は、そう確認されて、まじまじとポーカーフェイスの彼を見上げる。

つい一昨日は、『そんなに好きか、俺のことが』と自信ありげに言っていたくせに疑っているのだろうか。

なんとなく聞いただけかもしれないが、きっちりと否定しておきたくて、私は力強く言い返す。


「ないに決まってるじゃないですか。今私には、元カレなんてどうでもいいって思うくらい好きな、人が……」


しまった、勢いで恥ずかしいことを……。

徐々に視線を落とすと共に歯切れが悪くなり、俯きがちに「おわかりでしょう?」と呟いた。

やり手な不破さんのことだ。もしこれを言わせたかったのだとしたらしてやられたな、とほんの少し悔しくなっていると、ふいに右手が温かくなる。


「ならよかった」


私の手を取った不破さんは、満足げにゆるりと口角を上げていた。望んだ通りに手を繋がれ、心許なさが消えていく。


「それでも、昔の男に会わせるのはいい気しねぇけど」


次いで、少々ぶっきらぼうな口調でぼやくと同時に指を絡められ、心臓が揺れ動いた。

まさか、ちょっと嫉妬してくれているのだろうか。だとすると、突然恋人繋ぎをしたのも独占欲の表れのように思えて、嬉しさが込み上げてくる。
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