俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
不破さんと初めて顔を合わせたのは、入社して三ヶ月が経った頃。
その日私は、あろうことかクレーム対応をひとりで任されてしまい、取引先の方に怒られてヘコんでいた。
なんで入ったばかりの私が、こんなに責任が重い仕事を任されるのだろう。これって、上司がクレーム対応をするのが嫌だから、私に押しつけてる?
どうしてもそんなふうに考えてしまい、理不尽さや虚しさで、心が押し潰されそうだった。
ダメージを受けたまま、別件でホテルのレストランに寄ると、厨房に不破さんがいた。コックコートに身を包んだ彼は、あからさまに元気のない私に気づいて声をかけてくれたのだ。
『どうした? 死にそうな顔して。とりあえずこれ食っとけ』
そう言って渡してくれたのは、野菜と卵がたっぷり挟まったサンドイッチ。
不破さんがまかないで作ったものらしいので遠慮したのだけど、『出されたもんは食え』と半ば強引に渡されてしまった。
ちゃんとした休憩が取れず、お腹が空いていたのも事実だったため、本社に戻る途中、我慢できずにサンドイッチに噛りついた。