俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
そうしてまもなく、凛々しい戦闘服に身を包んだ社長様がやってきた。社員と挨拶を交わしながら社長室に入り、私にも麗しい笑みを向けて挨拶をする。


「おはよう」

「おはようございます」


よし、完璧にいつも通り。この調子で、社員の皆に私たちのことは気づかれないようにしよう。

何事もなかったかのように挨拶を返して、パソコンに向き合った直後、雪成さんの手が伸びてきて私のデスクになにかを置いた。


「忘れ物」

「え? ……あっ!」


キョトンとしてそれに目をやり、次の瞬間ギョッとする私。置かれていたのは、昨日つけていたネックレスだったから。

そういえば、シャワーをお借りしたときに外して、そのまま忘れていたんだった!

一瞬にして愛し合った映像がまざまざと頭に浮かんでしまう私に、雪成さんは涼しげな顔でコートを脱ぎながら言う。


「別に取らなくてもいいのに。裸にそれだけ身につけてるのもそそられ──」

「本日の予定ですが!」


私は赤面してネックレスを握りしめると、慌てて彼の怪しい言葉を遮った。

誰にも聞こえていないだろうけど、やめてくださいよ! いろいろ思い出して仕事にならなくなっちゃうでしょーが!
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