俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
少し年季の入ったレトロな店が思い浮かび、お客様だけでなく、ご両親の笑顔も溢れていたであろうことが想像できた。
優しい目をする雪成さんからは、その店を愛していることが窺える。
ひとつ気になるのは、彼の言葉が過去形だということ。今は店をやっていないのだろうか。
考えを巡らせていると、彼の穏やかな表情がわずかに曇り始める。
「俺も当たり前のように料理人になる道を選んでたけど、いつからか本格的なフレンチを学びたくなった。将来は自分の店を持ちたかったから、実家を継がせたかった親父とは次第に反発し合うようになって、高校卒業したら家出同然でこっちに出てきたんだ」
ご両親と仲違いしていた原因はこういうことだったらしい。高校卒業後に上京したところはとても共感できて、「私と似てる……」と、つい独り言をこぼした。
不思議そうな顔をする雪成さんに笑みを向け、なんでもないというふうに首を振ると、彼は続きを話し出す。
「親父と実家の店のことはずっと心に引っかかってて。ひとりになってみると、意地張って出てきたのは間違いだったかもって悩んだよ。
本格的に修行したいならホテル専属のスタッフになるべきだったのに、今みたいな委託の会社に入ったのはそういう迷いからだったんだと思う」
優しい目をする雪成さんからは、その店を愛していることが窺える。
ひとつ気になるのは、彼の言葉が過去形だということ。今は店をやっていないのだろうか。
考えを巡らせていると、彼の穏やかな表情がわずかに曇り始める。
「俺も当たり前のように料理人になる道を選んでたけど、いつからか本格的なフレンチを学びたくなった。将来は自分の店を持ちたかったから、実家を継がせたかった親父とは次第に反発し合うようになって、高校卒業したら家出同然でこっちに出てきたんだ」
ご両親と仲違いしていた原因はこういうことだったらしい。高校卒業後に上京したところはとても共感できて、「私と似てる……」と、つい独り言をこぼした。
不思議そうな顔をする雪成さんに笑みを向け、なんでもないというふうに首を振ると、彼は続きを話し出す。
「親父と実家の店のことはずっと心に引っかかってて。ひとりになってみると、意地張って出てきたのは間違いだったかもって悩んだよ。
本格的に修行したいならホテル専属のスタッフになるべきだったのに、今みたいな委託の会社に入ったのはそういう迷いからだったんだと思う」