俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
この間、電話で父の話が聞けて嬉しかったので、私はついしゃべり続けてしまう。
「母が言うには、父は去年新しくお店を始めたらしいんです。確か“リオン”っていう名前の洋食屋さんだって──」
その直後、急ブレーキをかけたらしい車がガクンと揺れ、「きゃ!」と小さな叫び声が口から出た。
驚いて前を見れば、赤信号の手前で止まっている。おそらくブレーキを強く踏んだだけなのだろうが、雪成さんは普段こういう乱暴な運転はしない人だとわかっている。
どうしたのかと彼に視線を移すと、その横顔はなぜか微かに動揺を露わにしているように見えた。
「悪い……大丈夫か?」
「全然、平気です。どうかしましたか?」
私を気遣ってくれたものの、彼はすぐに前を向き、なにかを考えているのか真剣な表情になる。そして、前を見据えたままこう問いかけてきた。
「親父さんの苗字って?」
なんで私の父の苗字を知りたいのか疑問に思いつつも、とりあえず答える。
「紅川(べにかわ)、ですが」
「……そうか」
雪成さんは小さく頷き、低い声でぼそっと呟いた。どこか遠くを見つめ、徐々に険しくなっていく彼の顔に、私は漠然とした不安を覚える。
「母が言うには、父は去年新しくお店を始めたらしいんです。確か“リオン”っていう名前の洋食屋さんだって──」
その直後、急ブレーキをかけたらしい車がガクンと揺れ、「きゃ!」と小さな叫び声が口から出た。
驚いて前を見れば、赤信号の手前で止まっている。おそらくブレーキを強く踏んだだけなのだろうが、雪成さんは普段こういう乱暴な運転はしない人だとわかっている。
どうしたのかと彼に視線を移すと、その横顔はなぜか微かに動揺を露わにしているように見えた。
「悪い……大丈夫か?」
「全然、平気です。どうかしましたか?」
私を気遣ってくれたものの、彼はすぐに前を向き、なにかを考えているのか真剣な表情になる。そして、前を見据えたままこう問いかけてきた。
「親父さんの苗字って?」
なんで私の父の苗字を知りたいのか疑問に思いつつも、とりあえず答える。
「紅川(べにかわ)、ですが」
「……そうか」
雪成さんは小さく頷き、低い声でぼそっと呟いた。どこか遠くを見つめ、徐々に険しくなっていく彼の顔に、私は漠然とした不安を覚える。