俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
今日の会には、プロバイドフーズ時代にお世話になった溝口さんを始め、当時の仲間や部長も出席している。

すっかりご無沙汰してしまっていた彼らのもとへ向かうと、溝口さんたちはとても元気そうで、明るい表情から職場の環境がだいぶ改善したことが見て取れる。

部長らは人が変わったように真面目に働いているそうで、「前社長の頃は暗黒時代だったんだよ」なんて笑い話にして盛り上がった。

それから、ひと通りお酌して回ったあと、雪成さんの向かいの席に戻った私は、彼が桐原さんの隣でいたって普通に機嫌よくお酒を酌み交わしているのを眺めている。

普段からあだ名で呼び合っていることもあり、皆お酒の席でもとてもフランクだ。雪成さんたちのもとにも、さっきから代わる代わる人がやってきて、挨拶をしたり雑談したりと楽しそう。

私も話したいけど、会のあと時間あるかな。連休中、一日でもいいから会ってくれるかどうか聞いておきたい。

仕事中とは違って打ち解けた笑みを見せる彼に、いまだに見惚れてしまっていたとき、突然横からエイミーがずいっと身体を寄せてきた。


「ねーちょっと聞いてよ、アリサ! 武蔵って結婚してたんだって!」


いい感じに酔っているらしく、頬を薄紅色に染めた彼女は、私の腕を掴んで興奮気味に叫んだ。

その事実は私も初耳なので、目を丸くしてエイミーの隣に座っている武蔵さんを見やる。
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