俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「……俺は、一生できないかもね」


泡が消えたビールのグラスに目線を落とす彼の口からこぼれたのは、冷たさの交じる声とわずかな嘲笑だった。

エイミーは、「またまたふたりとも~」と本気にしていないけれど、私にはただの冗談とは思えず、胸に針で刺されたような痛みが走る。

別に、甘い返答を期待していたわけではない。ただ、少しは私のことを意識してくれていたらいいな、というかすかな願望をどうしても抱いてしまったから。

こちらを見もせず、私とのことをまったく考えていないような発言をされたのは、やはりショックだった。

でも、“一生できない”というのもなんだか大袈裟な気がするし、彼の真意は一体なんなのだろう。

彼の考えていることや、抱えているものをやっと共有できるようになったと思ったのに、またわからなくなってしまった。

人知れず落ち込んで、あまり酔えないまま時間はすぎていき、そろそろお開きという頃、ふいに桐原さんと雪成さんの会話を耳がキャッチする。


「社長は二次会はどうされます?」

「俺はこれで帰るよ」


それを聞いた瞬間、私はほぼ反射的にぱっと手を挙げてこう言っていた。
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