俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「あっ、私送ります! 今タクシー呼びますから」


そこでようやく、雪成さんの視線が私を捉えた。有無を言わさぬよう、すぐにスマホを取り出して席を立つ。

とにかくふたりきりになりたい。クリスマスのときみたいに、ちゃんと向き合って全部さらけ出して、この言いようのない不安を少しでも解消したい。

焦燥を抱きつつ、会が終了するとそそくさと皆に軽く挨拶をし、雪成さんを連れて店の外に待たせていたタクシーに乗り込んだ。

運転手のおじさんに彼のマンションの場所を告げようとするも、彼のほうがひと息早く口を開く。


「調布まで」

「えっ!? 私はあとでいいですよ、遠いですから」

「そのほうが話できるだろ」


彼の顔に笑みはなくても、話をしてくれようとしているのだと思うと嬉しい。でも私のマンションまで送るということは、今夜は一緒に過ごさないという彼の意志の表れでもあるし、単純に喜べない。

そうこうしているうちに、車が走り出す。とにかくなにか話そうと思い、ざわめく胸を抑えて無難な話題を振ってみる。


「盛り上がりましたね、忘年会。前の職場の仲間とも話せてよかったです。皆、元気そうだったし」

「あぁ、あそこは平和になっただろ。給料泥棒は排除したからな」
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