俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
その矢先のこと。風が冷たくなってきた十一月初旬の朝、いつものように本社に出勤した私は、オフィスに違和感を覚えた。
デスクが十二台ある、こぢんまりとした営業部のフロアでは、老若男女の社員が各々業務をし始めているのだけど、いつもとなにかが違う。
なんだろうと考えてまもなく、毎朝デスクにふんぞり返っているオジサマ部長の姿がないからだと気づいた。
壁側にある自分のデスクにつき、隣の席に座るアラフォーママさん社員の溝口(みぞぐち)さんに尋ねてみる。
「部長、どうしたんですかね? この時間には必ずデスクにいるのに」
「ねー、私も気になってたのよ。でも、あの人が不在でもそんなに支障ないし、むしろ口うるさいのがいなくて心地いいわ」
歯に衣着せぬ溝口さんの発言はその通りで、私も苦笑して頷いた。
溝口さんは明るくて小奇麗で、人当りがいいお姉さん的な存在。この部内で私が一番慕っている先輩で、会社の愚痴り合いをしながらも、ずっと一緒にやってきた仲間だ。
一方の部長は、こちらの都合なんてお構いなしにあれもこれもと用件を押しつけ、自分はロクな仕事をしないような人。本当にいなくても変わりない。
デスクが十二台ある、こぢんまりとした営業部のフロアでは、老若男女の社員が各々業務をし始めているのだけど、いつもとなにかが違う。
なんだろうと考えてまもなく、毎朝デスクにふんぞり返っているオジサマ部長の姿がないからだと気づいた。
壁側にある自分のデスクにつき、隣の席に座るアラフォーママさん社員の溝口(みぞぐち)さんに尋ねてみる。
「部長、どうしたんですかね? この時間には必ずデスクにいるのに」
「ねー、私も気になってたのよ。でも、あの人が不在でもそんなに支障ないし、むしろ口うるさいのがいなくて心地いいわ」
歯に衣着せぬ溝口さんの発言はその通りで、私も苦笑して頷いた。
溝口さんは明るくて小奇麗で、人当りがいいお姉さん的な存在。この部内で私が一番慕っている先輩で、会社の愚痴り合いをしながらも、ずっと一緒にやってきた仲間だ。
一方の部長は、こちらの都合なんてお構いなしにあれもこれもと用件を押しつけ、自分はロクな仕事をしないような人。本当にいなくても変わりない。