俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
私も深く気にしないで仕事しよう。そう軽く考えて、メールのチェックをし始めたとき、オフィスのドアが開いた。

入ってきたのは、噂をしていたばかりの部長だ。ようやく来たか、という調子で、社員皆がそれぞれ挨拶をする。

しかし、なぜか青ざめたような顔色をしている部長は、「全員、今から会議室に来てくれ」と声をかけ、またすぐに出ていってしまう。

私たちは周りの人たちと顔を見合わせ、一様に首を傾げるも、とりあえず言われた通りに会議室に向かうことにした。


会議室は三階にある。八十人弱が入れる広さのそこには、すでに各部の社員が集まっていた。全員で五十名ほどだが、そのほとんどがなぜ集められたのか理解していない様子。

ざわざわと話し声が響く中、私は溝口さんと並んで席につく。

そうして間もなく、重役の社員に続いて、初老の社長が硬い表情で現れた。

……なんだろう、この物々しい雰囲気は。

皆が不穏な空気を感じ取ったのか、しんと静まり返ると、中央に立った社長は一度私たちを見回し、重そうな口を開く。


「皆、落ち着いて聞いてほしい。このたびプロバイドフーズは、“パーフェクト・マネジメント”と、社名を変えることになった」

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