俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
回避不能なハートブレイク
雪成さんにフラれ、タクシーを飛び降りた私は、しばらく建物の陰に身を潜めて泣いた。
しばらくして落ち着いてきたものの、彼の顔を思い返すだけで涙は込み上げてきてしまう。仕方ないので無理やり違うことを考えて、なんとかとぼとぼと歩き始めた。
俯いて駅に向かっていたそのとき、突然「アリサ!?」という声が響き、ビクッと肩が跳ねる。
び、びっくりした……誰!?
ばっと顔を上げると、前方からこちらに駆け寄ってくる愛らしい女性の姿が視界に入り、私は目をまん丸にした。
「エイミー……!」
つい先ほどまで一緒にいた彼女に、こんなところで再会するとは。そういえば、エイミーが住んでいるのはこの駅の辺りだと言っていたっけ。
そう思い出したのもつかの間、私の顔を見て戸惑っている彼女に気づき、はっとした。
いけない、泣いていたことがバレバレだ。慌てて濡れた頬を手で拭い、無理やり口角を上げて問いかける。
「今日は地下アイドル復活しなかったの?」
「あ、うん、本当はやりたかったけど、カラオケ屋どこもいっぱいでさ~……じゃなくて!」
エイミーは普通に答えたものの、すぐに心配そうな形相になって私の両腕を掴んだ。