俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「……ありがとう。でも、今回はやめとく。まずはお母さんとたくさん話したいから」


ちょっぴり照れ臭さを感じつつも素直な気持ちを伝えると、母は心底嬉しそうな笑みを浮かべた。


「じゃあ、恋の話でも聞かせてくれる?」

「えぇ」


そうくるとは予想外で、私はドキリとしてしまう。一応まだ傷心中だから、恋愛ネタは振らないでほしいのが本音だ。

しかし、そんなことを知る由もない母は、上機嫌で私のグラスに手作りの梅酒を注ぐ。


「夢だったのよー、娘と恋バナするの。学生時代は全然口聞いてくれなかったし、今夜はたっぷり聞かせてもらうわよ」

「えぇ~……」


もうその気満々の母には抗えず、結局口を割らされることとなった。

とはいえ酔っ払うと口が軽くなるもので、とりあえず過去の恋愛話をおもしろおかしく暴露して、それなりに楽しく年を越したのだった。



新年を迎えた今日も、私は昨日と同じくこたつに入って、のんびり友達にお年賀メールを返している。

実家に戻ってきた途端、完全に学生化している自分に呆れつつも、ぬくぬくしたこたつから離れられないでいるところに、一件の新しいメッセージが届いた。
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