俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
……ん? その言い方、まるで私が失恋したことを知っているかのようですが、もしかして。


「誰かになにか聞きました?」

「橘さんが、『アリサとボスがハートブレイクしちゃってるから、イクミンなんとかできない?』と助けを求めてきたので」


淡々とアリサの口調を真似る彼は面白いけれど、笑うよりも脱力してうなだれてしまう。

エイミー、なんで言っちゃうかな! 口止めするのを忘れていたことが悔やまれるわ……。


「なんて口軽なアイドル……!」

「社長と同じ反応ですね」


おかしそうにクスクスと笑った桐原さんのひとことにはっとし、私は姿勢を正した。

この方は、私が元気かを確認するためだけにここまで来たわけではないはず。さっそく大事なことを聞いてみようと思考を切り替える。


「あの、雪……社長についてのお話というのは?」


私が尋ねた直後、ホットのブラックコーヒーとカフェラテが運ばれてきた。

一旦私たちはそれに口をつけ、ひと息ついたところで、桐原さんが真剣な眼差しを私に向け、口を開く。


「単刀直入に言うと、あの人があなたを突き放したのは、彼のご両親の洋食屋が原因です。リオンという名前の」
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