俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
私たちはどうなるの? これからどうすればいいの?

おそらく全員が同じことを頭に巡らせ、困惑しまくっている中、社長は「新しい社長が挨拶をされるから、このまま待つように」とだけ言い、逃げるようにオフィスを出ていってしまった。

残された皆は動揺と不安を隠せず、周りの仲間と話し出す。私も例外なく。


「私たち、どうなるんだろ……。パーフェクトなんとかっていう会社の人間になるんですか?」

「普通に考えたらそうよね。社長が夜逃げしなかっただけよかったわよ。これで給料が上がれば万々歳だけど」


怪訝そうにする溝口さんは、やっぱりまずそこが気になるらしい。

待遇の面もだけれど、勤務地や仕事内容も変わったりするのか、なにもわからなくて不安でしかない。

会議室内に重苦しい空気が充満し始めていたそのとき、前方にあるドアがガチャリと開いた。ざわめきが瞬時に静まり、私たちはそこに注目する。

新社長のお目見えだろうか。うちを乗っ取った人物とは、一体どんな人なのだろう。


「あら、すっごいイケメン」


革靴の小気味良い音を響かせて姿を現した人物に、溝口さんが意外そうな声を控えめに上げる。

それと同時に、私の全神経がその男性に集中し、目を疑った。

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