俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい

愛して、抱きしめて


駅構内に設置された時計の針は、あと数分で三時半を差そうとしている。私は桐原さんと一緒に、改札の前に手持ち無沙汰で立っていた。

雪成さんはまだ来ないし、あれから連絡もない。

リオンは駅から車で十分ほどの距離にあるそうで、電話したのは三十分前だから、すぐこちらに向かっていればもう着いているはずだ。

もしかしたら、交通機関のトラブルかなにかで遅れていることも十分ありえる。しかし、今の私にはそう思える余裕はなかった。

ついに三時半をすぎても来る気配はなく、構内にやってくる人々を眺めるのをやめ、改札に向き直る。桐原さんは腕時計を見て、ため息交じりに言う。


「来ませんね……」

「あの人は、一度言ったことは曲げない主義のような気がします」


苦笑とともにそうこぼすと、彼も小さく笑って「さすが、よくわかっていますね」と褒めた。

これは褒められても微妙だな、とさらに苦笑を重ねるも、桐原さんは私を安心させるようなしっかりとした声をくれる。


「でも、そんなプライドは必要ないときもある。今がそのときだと、彼はきっと気づいてますよ」


なんの確証もないけれど、その言葉は心強くて、ほんの少しだけ沈んだ気持ちが浮上する気がした。
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