俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
すがるように桐原さんを見上げていると、彼は私の首元あたりを注視して、なにかに気づいたらしくクスッと笑う。そして、いつかと同じようにこちらに手を伸ばし、下ろした髪の毛をそっと掻き分けた。
そうされてはっとする。今日つけているのは、歓迎会のときにしていたのと同じネックレスだ。きっとまた留め具が前に来てしまっているのだろう。
気づいて直そうとしたものの、彼のほうが早かった。前回同様、抱きしめるかのごとく身を屈めて接近された、その瞬間。
なぜか後方から胸の前に誰かの腕が回され、桐原さんから引き離された。私は驚いて肩をすくめ、目をしばたたかせて後ろを振り向く。
そうして視界に入った光景は、夢でも見ているかのように現実味がなかった。
私をバックハグしているのは、少し息を切らせた雪成さんだったから。
目を見開いて固まる私とは違い、桐原さんは特別驚いた様子もなく、「社長……」と、ぽつりと呟いた。
「ったく……事故で渋滞なんかしなかったら、余裕でかっさらえたのに」
髪も呼吸も乱れているところからして、途中から走ってきたことが窺える。そんな雪成さんは私を抱いたまま息を整え、鋭い瞳で桐原さんを捉えて言い放つ。
「悪いが、どうしても麗は譲れない。俺以外、誰にも」
そうされてはっとする。今日つけているのは、歓迎会のときにしていたのと同じネックレスだ。きっとまた留め具が前に来てしまっているのだろう。
気づいて直そうとしたものの、彼のほうが早かった。前回同様、抱きしめるかのごとく身を屈めて接近された、その瞬間。
なぜか後方から胸の前に誰かの腕が回され、桐原さんから引き離された。私は驚いて肩をすくめ、目をしばたたかせて後ろを振り向く。
そうして視界に入った光景は、夢でも見ているかのように現実味がなかった。
私をバックハグしているのは、少し息を切らせた雪成さんだったから。
目を見開いて固まる私とは違い、桐原さんは特別驚いた様子もなく、「社長……」と、ぽつりと呟いた。
「ったく……事故で渋滞なんかしなかったら、余裕でかっさらえたのに」
髪も呼吸も乱れているところからして、途中から走ってきたことが窺える。そんな雪成さんは私を抱いたまま息を整え、鋭い瞳で桐原さんを捉えて言い放つ。
「悪いが、どうしても麗は譲れない。俺以外、誰にも」