俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
おめでたい自分に呆れつつも、社長を続ける意志を確認して正直ほっとしていると、彼は父をまっすぐ見つめて続ける。
「ここは紅川さんにお任せいたします。これからは父のメニューに囚われず、紅川さんの“リオン”を作っていってください」
凛とした雰囲気を纏ってはっきりと言うその姿に、なんだか胸がじんとした。それと同時に、長い間彼の中にあったであろう罪悪感や後悔が、ようやく消えていったように思えた。
雪成さんの答えを聞いた父は、穏やかな笑みを浮かべて頷く。
「そうか、わかったよ。ありがとう。でも、ひとつだけ君に渡したいものがある」
父は突然席を立ち、厨房のほうへ向かう。すぐに戻ってきた彼の手には、なにやら古びたノートが持たれていた。
「はい、君のお父さんが残したレシピだよ。『もしも息子が現れたら渡してやってほしい』と頼まれていたんだ」
差し出されたそれを凝視する雪成さんは、感動と驚きが混ざったなんとも言えない表情をしている。
ためらいがちにノートを受け取ると、ゆっくりページを開いた。
「……これを見られるときが来るとは、思ってもみませんでした」
彼は綺麗な字で事細かに書かれたそれを食い入るように目で追い、ほんのわずかに声を震わせる。その瞳は、ゆらゆらと揺れているように見える。
「ここは紅川さんにお任せいたします。これからは父のメニューに囚われず、紅川さんの“リオン”を作っていってください」
凛とした雰囲気を纏ってはっきりと言うその姿に、なんだか胸がじんとした。それと同時に、長い間彼の中にあったであろう罪悪感や後悔が、ようやく消えていったように思えた。
雪成さんの答えを聞いた父は、穏やかな笑みを浮かべて頷く。
「そうか、わかったよ。ありがとう。でも、ひとつだけ君に渡したいものがある」
父は突然席を立ち、厨房のほうへ向かう。すぐに戻ってきた彼の手には、なにやら古びたノートが持たれていた。
「はい、君のお父さんが残したレシピだよ。『もしも息子が現れたら渡してやってほしい』と頼まれていたんだ」
差し出されたそれを凝視する雪成さんは、感動と驚きが混ざったなんとも言えない表情をしている。
ためらいがちにノートを受け取ると、ゆっくりページを開いた。
「……これを見られるときが来るとは、思ってもみませんでした」
彼は綺麗な字で事細かに書かれたそれを食い入るように目で追い、ほんのわずかに声を震わせる。その瞳は、ゆらゆらと揺れているように見える。