俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
仕事で嫌なことがあったときはお互いに愚痴って相談し合えるし、くだらないテレビ番組でも笑って気分転換できるし、なにより寂しくない。毎日楽しく気楽に過ごしているのだ。

このマンションは、たいして広くはないけれどお互いの部屋があり、オートロックで女性にも優しい。

いつものように居心地のいいリビングのクッションに座り、ローテーブルに置いた鍋にすき焼きの具材を入れながら、私は今日の衝撃的な出来事を話した。

緩いウェーブを描くセミロングの髪をひとつに括った桃花は、器に卵を割ると同時に、自分の目と口もパカッと開く。


「えっ、不破さんって、昔よく麗が話してた調理師の!?」

「そうなんだよ、ほんと信じられなくて叫びそうになったよ。まぼろしぃ~!って」


テレビでよく見るタレントさんのマネを全力でしてみると、桃花は手を叩いてウケながら、「急にぶっこまないで」とツッコんだ。

そして、ぐつぐつと煮えてきた鍋をしばし放置し、彼女がスマホを手に取る。

「パーフェクト・マネジメント、だっけ?」と言いながら、会社を検索しているようだ。

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