俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「川内社長はかなりの愛妻家で、手土産も奥様にあげているそうです。私たちがお渡ししたものはパウンドケーキで、その中にナッツが入っていたのですが、奥様はピーナッツアレルギーだったそうで……」

「それで機嫌を損ねたということですか」


納得したような専務の言葉に、「はい」と頷いた。

専務のこの様子からして、あのとき会食に同席していた営業部長はやっぱりこのことは話していなかったのだろう。

手土産を選んだ自分の責任だと思われるのを恐れたに違いない。どこまでもクズだ。

内心呆れていると、上昇を始めるエレベーターの扉側に腕組みをして立つ不破社長が、「そりゃ運が悪かったな」と、フッと鼻で笑う。


「今回の手土産にもナッツが入っていないか確認しておきます。とても助かりました、ありがとうございます」


丁寧に頭を下げてくれる桐原専務に、私は恐縮しながら「いえ」と軽く首を横に振った。

お節介かもしれないと懸念したけれど、一応伝えておいてよかった。

ホッとする私に、腕組みをしたままの社長が目線を向ける。

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