俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
Day & Night ―2―
濃密な秘書業務
不破社長に口説かれ……いや、異動の誘いを受けた翌週、私はさっそく秘書として本社に出社することになった。
溝口さんと離れるのはかなり寂しいけれど、事情を話すと、彼女は『大抜擢じゃない! 頑張ってよ~』と応援してくれた。
それは桃花も同じで、『麗が社長秘書だよ、社長秘書!』と肩書きをわざとらしく口にしては、その響きに興奮している。
私も、これまでと違った自分になったみたいで、身が引き締まる思いだ。初出勤の今日はレディーススーツに袖を通し、長い髪もすっきりとアップにして、気合十分でアパートを出た。
パーフェクト・マネジメント本社は、新宿にある三十一階建ての複合オフィスビルの中にある。
辿りついたその高層ビルは、これまで働いていたビルとはまったく違って圧倒されてしまう。
緊張しつつ広大で綺麗なエントランスホールに入ると、壁一面に設けられた窓のそばで桐原専務が待っていてくれた。見知ったその姿を見て少しだけホッとし、品のよい笑みを見せる彼に駆け寄る。
「桐原専務、おはようございます!」
「おはようございます、有咲さん。さっそくオフィスにご案内いたしますね」
専務はとてもスマートな対応で、エレベーターのほうへと私を促した。