俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
秘書はれっきとした仕事だから引き受けたけれど、そんな怪しすぎる頼みは聞けるわけがない。


「嫌です!」

「なんで?」


きっぱり断ると、社長は私がこの反応をすることをわかっていたのか、間髪入れずに問いかけてきた。軽く怯んでしまい、しどろもどろになりつつ言う。


「なんで、って……だって、社長のご自宅に行くんですよね? その、ふ、ふたりで」

「あぁ。ここじゃできないようなコトをするつもりだからな」


社長は、ガラス張りの室内をぐるりと見回し、最後に私に流し目を向けて意味深な回答をする。その視線も声も、やけに艶めかしく感じ、余計に危ない妄想を掻き立てられてしまう。

皆に見られるこの場所ではできないコトを、彼の自宅にふたりきりで……って、いかがわしい特別報酬に思えて仕方ない!


「ますます嫌です!」

「つれないねぇ」


小刻みに首を横に振って正直にもう一度言い切ると、社長は余裕のある笑みをこぼした。

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