俺様社長はカタブツ秘書を手懐けたい
「イクミンって誰?」

「あ、桐原専務のことだよ。桐原 生巳(きりはら いくみ)っていうの」

「へぇ、そうなんだ」


専務のフルネーム、初めて知った。どう考えても彼には不似合いなあだ名で呼べちゃうとか、さすがはエイミー。

彼女に限らず、この社内では本当に皆好きなように呼び合っているからだいぶ慣れてきたものの、私はまだ役職者に対してはそこまでフレンドリーになれない……。

まぁ、あだ名で呼ぶかは別として、歓迎会でもう少し親しくなれたらいいな。最近こういう集まりはなかったから楽しみだ。

ワクワクしながら書類をファイルに綴じていると、エイミーは私のデスクにちょこんと置かれたあるモノに気づき、身体を屈めてまじまじと見る。


「あれっ、これもしかして、この間の北海道出張のお土産?」

「あぁうん、そうだよ」


不破さんがくれた、鮭をくわえた熊さんは、せっかくなのでデスクの上に置くことにした。重みがあるため、書類を押さえておくのになにげに使えたりする。

すでに愛着が湧いてきているのだけど、エイミーはぷっと吹き出し、大口を開けて笑う。
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