還魂―本当に伝えたかったこと―
***

 次の日、一旦自宅に戻って着替えてから洸のバイクに乗り、自然公園まで出掛けた。もちろん、3人乗りでだけど――この間と同じように死神は大鎌を引っ掛けて、私たちのあとをついて来た。

(楽しいんだけど微妙すぎるよね)

 正直な感想を、心の中でこっそり述べたら。

〈俺の仕事に文句があるのか〉

 頭の中に突然、死神の声が聞こえてきた。

(勝手に、私の心を読まないでよ)

 ムカつきながら思いきって、苦情を強く心の中で主張してやった。

〈貴様の考えることが、駄々漏れしてるのが悪い。しかも浅慮な考えをする馬鹿な頭だ〉

 なぜだか苦情が倍になって、自分の頭の中に返ってくる。

(浅慮な考えって。やっぱ駄目なの?)

〈駄目に決まってるだろう。二輪の免許を取得してこのバイクに乗り、事故ってやろうなんていう浅はかな考えは、バカそのものだ〉

(……だって本に書いてあったんだもん。身代わりになれば、その人が助かるって)

〈悪魔と俺を同じ扱いにするな。ド阿呆め〉

 舌打ちと共に聞こえてきた声に、やれやれと思わされた。しかもまた怒らせちゃった。何かこの死神とは、とんでもなく相性が悪そう。

〈――良くてたまるか!〉

 確かに……私もそれは思うよ。だけど洸のために、何とかしなきゃならない。

(今晩、私の家に来てほしいんだけど。じっくり話がしたいから)

 こんな風に心で会話するんじゃなく、面と向かっていろいろ言ってやりたいことがある!

〈俺も同意見だ、この際はっきりさせよう〉

 洸の体を後ろからぎゅっと抱き締めながら、広い背中をじっと見た。愛しいその背中はとても温かくて、頼りになるものなのに。どうしたら、失わずに済むんだろう?
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