還魂―本当に伝えたかったこと―
***

「う~……。何か異常に疲れてる」

 仕事が定時で終わって良かった。残業してたらきっと、家にたどり着けなかったかもしれない。魂をいじったって言っていたから、まだその影響が出てるのかもしれないな。シルバーの技、恐るべし……。

 ちょうど信号待ちをしてるときに、鞄の中で携帯が震えているのが伝わってきた。鞄から取り出したら青信号に変わったので、歩きながら出る。

「もしもし……」

「もしもし私っ!」

 妹の慌てた声に、心臓が急加速する。

「姉ちゃん落ち着いて聞いて。ウチに電話が着たの。水留さんが」

「バイクで事故ったんでしょ?」

「やっぱり変なところに悟い。姉ちゃん怖いよ」

「で、病院は? 洸は無事なの?」

 心の準備をしていたので、聞きたい事を冷静に口にできる。だけど胸の鼓動だけは、どうにもならなかった。

「偶然にも、加藤さんが運ばれた病院と同じだよ。詳しいことはまだ分からなくて」

(何でだろう、玲さんが運ばれた病院と同じなんて)

「分かった、今から向かう。お母さんには、遅くなるって伝えておいて」

「姉ちゃん、気を確かに持ってね。水留さん、きっと大丈夫だから」

「うん、ありがとね」

 電源をオフにして、震える手で鞄の中に戻した。

 頭の中にはいつものように、自宅前でバイクにまたがっている元気な洸の姿が浮かんだ。

 どうしてだろう。今日に限っていつもの予感が働かなかったのは――魂を弄ったせいなのか、それとも洸が無事だから?

 重い体にカツを入れて、病院まで一気に駆け抜けた。どうか洸が無事でありますようにと、願いを込めながら必死になって走ったのだった。
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