不覚にもアイツにときめいた
俺は田中の後ろにある、コーヒーマシーンの後ろに行き、

そして、フィルターをセットし、コーヒーを淹れた。

ゴポポポ

田中は相変わらず、資料作成に夢中で俺の方を向かない。

(そういえば、田中の髪綺麗だよなー…。ちゃんとキューティクルもあって…。)

…ってなんで俺田中の髪まじまじと見てんだよ。

キモいわ。

だけど

一度も染めた事ない、綺麗な黒髪が俺の目を離さなかった。

(田中もやっぱ女だからちゃんとケアとしかしてんだろうな…。)

その時

「あち!」

コーヒーが俺の指にかかった。

だけどそんな時でも田中は俺に目もくれない。

まあ、分かっていたけど。

てか俺何やってんだ。

(でもこいつ、何に対しても一生懸命なんだよな。)

…はっきり言って他の女子社員は頼りない。

書類作成は遅いし皆だいたい田中任せだ。

だけど文句何一つ言わず、田中は黙って書類作成をする。

(あんまり、無理すると身体壊すぞ…。)


そして、俺はそっと田中のデスクにコーヒーを置いた。



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